楽しみを貪るな ( Don’t Devour Enjoyments )
まどへる人の楽と思ふは、苦をもって、楽とおもへるなり / 鉄眼道光
迷いのなかにある人が「楽」と思ふことは、実は楽はない。本来は苦しみであるものを、楽しみと受け取っているのだ。江戸時代に生きた禅僧・鉄眼道光(てつげんどうこう)のこの言葉には、そんな意味があります。
求めているものが手に入ったとき、人は幸せな気持ちになります。しかし、それを貪るようになってしまうと、楽しみはとたんに苦しみに変わってしまいます。「手に入れるとさぞかし楽しいだろう」と考える心が、人を押しのけ、相手を否定する心までつくってしまい、自分ばかりか周りの人まで悩ませてしまうのです。
「苦のやすまりたるを楽とおもへり」
と鉄眼も言うように、私たちが「楽」と考えていることは、実はいっとき苦がおさまった状態にすぎません。楽を求めても、求める先には苦しかないということですね。楽しみを求めるのではなく、いまを楽しみにする。その考え方が、老いを生きるためのヒントになります。 【 『老いを生きる仏教の言葉100』 ひろ さちや[監修] 】
「楽しみを求めるのではなく、いまを楽しみにする。 ( We should not ask for enjoyments but we should enjoy now. )」、実にすばらしい考え方だと思います。